公正証書遺言でもめることはある?考えられるケースや対処法など
公証人の作成する公正証書遺言は、他の形式の遺言書に比べてトラブルになるケースは一般的に少ないといえます。
もっとも、公正証書遺言であってもトラブルが生じる可能性はゼロではありません。
本稿では、公正証書遺言でもめるケースや対処法について見ていきましょう。
公正証書遺言の有効性が問題となるケース
公正証書遺言の有効性に疑問を抱いた相続人等は、遺言無効確認訴訟を申し立てることができます。
そして、公正証書遺言であっても、①遺言能力のない遺言者が作成した場合、②公正証書遺言の形式的要件(民法969条)を満たさない場合、③民法上の無効・取消原因がある場合には、無効となります。
①遺言者に遺言能力がない
遺言能力とは、遺言の内容を理解し判断できる能力のことをいい、遺言書の有効な作成のためには、遺言者にこの遺言能力があることが必要とされています。
そして、遺言能力のない者が作成した遺言書は無効です(民法963条)。
具体的には、遺言者本人が重度の認知症であった場合には、遺言能力がなかったとされることがあります。
②民法969条の形式的要件を満たさない
公正証書遺言の要件は民法969条に定められており、具体的には以下となります。
⑴証人2人以上が立ち会う
⑵遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する
⑶公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせるか閲覧させる
⑷遺言者と証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名押印する
⑸公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記し、これに署名押印する
この中でしばしば問題となるのが、⑵の口授要件といわれるものです。
口授要件は、遺言者が公証人に対し、自ら遺言の内容・趣旨を直接口に出して伝えることを要することで、公正証書遺言が遺言者の意思に基づいて作成されたことを担保するために設けられています。
そして、この口授要件を欠く公正証書遺言は、無効となります。
具体的には、作成当日に、遺言者が遺言の内容の説明を受け、その内容で良いかという確認に対して頷くだけであったり、「はい」と返答するのみである場合に、口授がなかったと判断されるケースが考えられます。
この他にも、証人が民法974条の欠格事由に該当する者であった場合に、⑴の要件を満たさず遺言が無効となることもあります。
③民法上の無効・取消原因がある
遺言の内容が公序良俗に反していたり、遺言者が何者かに強迫されて遺言内容を作成していた場合、または勘違いや誤解、すなわち錯誤によって遺言を作成していた場合などは、民法上の無効原因・取消原因が認められ、無効となることがあります。
遺留分を侵害しているケース
遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に保障されている、遺産の最低限の取り分のことをいいます。
遺言者は、特定の相続人について、その遺留分よりも少ない遺産割合を内容とする遺言を作成することも可能です。
例えば、相続人に長男、次男の子がいる場合に、長男に全財産を相続させるという内容の遺言も作成できるということです。
しかし、上記の例であれば次男は、長男に対し、遺留分侵害額請求をすることができ、相続後に問題となることがあります。
遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額について、金銭での支払いを請求することをいいます。
遺産の一部について遺言書に記載がないケース
公正証書遺言に記載されていない遺産については、相続人全員で遺産分割協議をし、その分配方法を話し合って決める必要があります。
上記の遺産分割協議がまとまらない場合には、相続人間でトラブルとなる可能性があります。
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